塚 理の想い①(2020年10月)」 塚 理のひとり言②(2020年12月)

■塚 理のひとり事①(2020年12月)


∼新しい議員のカタチ∼

 私は16年前に議員に立候補する際から3つの柱をあげています。その中の一つが、医療問題です。「茨木から医療を立て直す!」との考えで、議会で誰にも負けないくらいに医療問題を勉強しようと各種研究会や様々な場所で情報を収集してきました。

 転機は約8年前。国が地方に地域医療構想の策定を命じたことでした。私は直感的に「地域の医療がまたおかしくなる。」と感じました。このことを聞いてもピンとこない方もいるかもしれません。と言うのは、今まで医療政策は国が大半、都道府県が少しという感じで政策を作成し、政令市や中核市以外の市町村は国や都道府県の言うがままに施策の実行をしてきただけなのです。つまり、市町村には医療政策を考えられる専門職員が誰一人いないのです。

 よく言われるのが、「塚さん、そんなこと言っても市民病院を運営している街もあるじゃないか。予防接種や健診もしているじゃないか。」との質問。実は、これは病院の経営や保健事業を実施しているだけであり、これらができることと、地域の医療政策を考えることができることとは別次元なのです。

 このような国から地方へと言う綺麗な考え方の裏では、以前に大問題を引き起こし、医師不足(医師の偏在)を生み出した新研修医制度導入の時と同じ状態が起きると私は考えています。受け皿がない中で、医局の力を削ぐかたちで導入された新研修医制度。地域医療は崩壊寸前にまでなってしまいました。茨木市も大きな病院で医師の確保ができず、外来を休診したり、2次救急の受け入れを止めることで、医療難民がでてくるようになりました。現在も専門職員がいない状態で地域医療構想を2次医療圏で考えていくようにとのことは、今まで以上に医療の市町村格差が出、医療がかろうじて生き残る市町村と崩壊する市町村の二極化に陥ると私は考えています。

 そこで、私は専門知識をもつ職員がいないのであれば、自身が専門家になり、職員とともに汗をかこうと考え、まず、京都大学大学院医学研究科の門戸を叩き、約2年間医学について勉強や研究をさせていただきました。議員との二足のわらじは大変でしたが、周りに多くの医師や薬剤師の方と机を並べて勉強をさせていただく中で、医学的知識も身につきました。

 しかし、その中で疑問に感じたのは、医学と医療とは次元が違う点です。よく医師免許をもった方が、国会議員や地方議員になっていることがあります。しかし色々調べると医師は医学(臨床、基礎)の専門家ですが、地域医療政策の専門家はほとんどいないことがわかりました。つまり、医師である厚生労働省の技官も医師出身の議員も地域医療政策については不慣れな方が多いのです。

 私はそんな方々が地域医療のことを議論していることに歯がゆい思いを感じていましたが、良いご縁があり、5年前に自治医科大学大学院にお世話になることになりました。自治医科大学は、現在日本で唯一の地域医療の立て直しを実践してきた大学であり、お世話になった学部は公衆衛生学の一環として地域医療政策の専門家を育てるための学部で、国からの鳴り物入りで創られた学部です。ここでは、週末に朝から晩まで社会人の4名の同級生と机を並べ、先生方とマンツーマンで勉強や研究をしました。医療政策だけでなく、工学(データ解析、統計学等)、経営学(MBA)が盛り込まれており、茨木の医療研究も並行して行い、その中でデータの大切さ、最新の知識の重要性をより学びました。現在は京都大学大学院の医学研究科に戻り、疫学、公衆衛生学、予防医学を主に研究し、本市の医療政策の課題を研究及び論文化しています。

 今までの話しを読まれて、市町村に専門知識をもつ職員がいないのであれば、コンサルを使ったらいいじゃないかと思われたかたもいらっしゃるのではないでしょうか。

 実は、現在、コンサル会社は、医療系のスキルはほとんどもっていないのです。これは医療系のコンサル会社を専門に経営されている数少ない方々にお聞きした話しです。確かに、様々な街のデータヘルス計画を見させていただくと、こんないい加減な解析で数百万円~1千万円近くのお金(税金)をコンサルに払っているのかと思うと大変残念な気持ちにもなりました。なぜこうなるかと言うと、チェックをする専門知識を有する職員や議員がいないことで、コンサルの言うがままになってしまうことが多いのです。

 その背景には、医療系のコンサルの多くも、今までは病院や開業医の経営を成り立たさせるための経営的コンサルであり、内部環境分析にのみ力を入れてきたことがあります。しかし、今回国からの課題は内部環境分析だけでなく、外部環境分析(地域の医療全体像の解析等)も含まれているのです。つまりコンサルが目を向けてこなかった部分であり、スキルをもっていない部分なのです。唯一両方に目を向けて取り組んできていたのは、一部の大学の医学部の先生方、厚生労働省の一部の職員だけと言うのが、この国の医療における不都合な真実なのです。

 私は、自身が考える「新しい議員のかたち」を書いてきました。私は、議員や議会に対する考え方で、「議員は行政のチェック機能だけを果たしたらそれでよいかと言うと、それは違う。」とずっと言い続けてきた人間です。極論ですが、もしチェックだけをするのなら、弁護士や公認会計士にお願いし、市民から任期付の有償ボランティア議員を募集すれば良いのではないでしょうか。地域要望をするなら自治会長で可能ではないでしょうか。やはり私は少数精鋭でも専門的な政策提言ができる政策集団にならなければ、議員も議会も住民からは不要な集団になってしまうのではないかと考えています。職員がもっていないスキルを議員が持ち、職員とともに汗を流して街を良くしていくこと。それが私の考える、「新しい議員のかたち」です。

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